「和」の名の下に——ある種の上司が使う美しい暴力

“和を乱すな”——この言葉を、あなたは誰から聞きましたか。

職場で、家庭で、時には友人関係でも——“和を乱す”という言葉は、日本社会の最も強力な”美徳の武器”かもしれない。

“和”が武器にされる4つのステップ

① 上司が不合理的な決定や傷つく言葉を吐く

会議で、上司が突然”お前、それでいいと思ってるのか”と怒鳴る。

全員が沈黙する。

あなたは”おかしい”と思うが、誰も何も言わない。

② あなたが少し異議を唱える → 「和を乱すな」

あなたが”ちょっと、それは違うんじゃないですか”と言った瞬間——

上司の顔色が変わる。

そして、周りの同僚も”和を乱すな”という目で、あなたを見る。

③ あなたが反抗しようとする → 「あなたが問題だ」

“やっぱり、お前が問題なんだよな”

そう上司に言われて、あなたは”自分が悪い”と思い始める。

最初は”おかしい”と思っていたのに、いつの間にか”自分が和を乱している”と思わされている。

④ あなたが沈黙する → 一切が”和”に戻る

あなたが諦めて沈黙すると、職場は”和”に戻る。

でも、その”和”は**あなたが傷ついていることを無視した、その上での”和”**だ。

本当の”和”じゃない。

世阿弥の智慧——真正の”和”は演じるものじゃない

能楽の世阿弥はこう言っている。

「本当の和は、演じるものじゃない。」

強く心に留めてほしい。

演じられている”和”の裏側には、必ず暴力がある。

日本社会が美徳とする”和”——でも、その”和”が”暴力の隠れ蓑”になっていることがある。

あなたは”和”を乱しているのか?それとも”暴力”を指摘しているのか?

ここで一度、立ち止まって考えてほしい。

あなたが”和を乱した”と言われた時、本当は何をしていただろうか。

たぶん、あなたは**“おかしい”と思ったことを、ただ言っただけ**だ。

でも、相手にとっては”自分の権威が脅かされること”だったのかもしれない。

“和を乱すな”——この言葉は、相手が”自分の権威を守るため”に使っている道具かもしれない。

簡単な自検——3つの問い

Q1: あなたの職場の”和”の中で、どれくらい個人の声が犠牲になっているだろうか?

思い出してほしい。

会議で、誰かが”異論”を唱えた時、その人はどうなっただろうか。

“和を乱す”と言われて、その後沈黙しただろうか。

Q2: “和”をいつも説く人は、本当に”和”を大切にしているだろうか?

よく観察してほしい。

“和”を強調する人は、本当に”全員の和”を考えているだろうか。

それとも、“自分の思い通りになる和”を強要しているだけなのかもしれない。

Q3: “和”のために、あなたは何を”殺して”きただろうか?

“和を乱すまい”として、あなたが”言わずに済ませたこと”、“諦めたこと”、“自分を殺したこと”——。

それらを、一度紙に書き出してほしい。

あなたはおかしくない

最後に、はっきり言わせてほしい。

あなたはおかしくない。

“和を乱すな”と言われたのは、あなたが”悪い”からじゃない。

“和”という美徳が、“暴力の隠れ蓑”に使われているだけだ。

あなたは、ただ”おかしい”と思ったことを言っただけ。

それは、健全なことだ。

今日からできること——まずは”気づく”ことから

① 次に”和を乱すな”と言われたら、心の中で「この和は、誰のための和?」と問いかける

答えがすぐに出なくてもいい。

“問いかける”だけで、十分な進歩だ。

② 信頼できる同僚を一人見つける——孤立させられる前に

“和”の名の下に、あなたが孤立させられそうになったら——。

信頼できる同僚に、一言”ちょっと相談してもいい?“と聞いてほしい。

③ 記録を始める——日付·発言·その場の状況を、帰宅後にメモする

“和を乱すな”と言われた瞬間を、詳しく記録してほしい。

後で読み返すと、“パターン”が見えてくるからだ。

本当の”和”は、あなたの沈黙を必要としない

最後に、もう一度言わせてほしい。

本当の”和”は、あなたが”自分を殺して”作るものじゃない。

本当の”和”は、全員の声が聞ける状態のことだ。

“和を乱すな”と言われた時——。

それは、あなたが”本当の和”に近づこうとしている証拠かもしれない。

次は S2「モラハラは『愛情』じゃない」で、家庭での別のパターンを理解する。